深い歴史を持つファクタリングですが、いつの時代も元請が有利であったようです。

ファクタリングの起源

 

様々な取引に利用されるお金

日本でも最近認知され、政府も積極的に推奨している資金調達手段の「ファクタリング」ですが、その歴史は古く起源は古代メソポタミアにあると言われています。
現代の形となったのは1300年代のイギリスの商人のあいだで行われた取引がはじまりで、今日に至っています。

 

古代メソポタミア文明は紀元前3100年ごろメソポタミア南部の地域に、系統不明の民族シュメール人が都市国家を創りだしたことがキッカケとされています。
今から5,000年以上も昔から、どのような形でファクタリングが行われていたのでしょうか?
ファクタリングは時代とともに進化をして現在の形に発展を遂げましたが、現代のファクタリングで見ても長い歴史がある中で、なぜ2010年代に入ってから国内で一気に普及したのでしょうか?
ファクタリングの起源から、仕組みや需要の変化を分析してみました。

 

 

いつの時代も元請有利

 

ファクタリングは平均1~2ヶ月、長いものでは半年から1年以上におよぶ売掛サイトによる資金繰りの問題を解決するサービスです。
常識で考えれば、納品を行うと同時にお金や穀物(古代の場合)で対価を得られる交換取引をするのが普通です。

 

しかし、元請は複数の業者や商人と取引をするので、管理上の問題から請求書をもらって成果物を精査した上で支払いを行っています。
建設業などは2次・3次と下請業務が発生して、元請と下請に挟まれている都合で売掛サイトが長くなるケースも目立ちます。
下請業務を行う売り手側の立場で考えた場合、仕事を選べるのであれば売掛サイトが長い仕事より即時払いの仕事を優先的に選びます。
しかし、大手や規模が大きい仕事と取引をするには、必然的に売掛サイトを受け入れるしかない状況に陥ってしまいます。

 

現代で見れば、大手ゼネコン、メーカー、公共事業を発注する自治体などが大きな元請の立場になります。
古代の場合は、個人同士のビジネスモデルが少なく、基本的には王朝を相手にしたビジネスが中心です。

 

時代によって元請の形態が変化していますが、どんな時代でも元請が強い立場になり下請側は仕事をもらうために言いなりになってしまうパワーバランスは同じです。
元請有利な状況から売掛サイトが発生すれば、資金調達に悩む事業者による需要と、お金の流れの問題点につけこんで商売をしようとした供給が発生します。

 

 

古代のファクタリングは貸付?

 

貨幣の代わりに使われていた穀物

古代からファクタリングに近い形の取引が存在しましたが、ファクタリングのように売掛債権という概念がありませんでした。
そもそも古代は貨幣自体がなく、穀物などが金銭に相当するものとして扱われています。

 

貨幣や契約という概念がなかった時代は、仕事をして将来収入が入ってくる見込みを理由にお金に相当する穀物などを受け取って、収入が入ったら受け取った穀物で返す形が主流でした。
つまり、メソポタミア文明など古代のファクタリングは、将来得られる予定の収入で返す口約束の貸付に近いものでした。

 

 

厳密に言えば、1300年代のイギリスの商人のあいだで行われた取引がファクタリングの起源だと表現するのが妥当です。

 

 

参考記事:古典的ファクタリングとは?

 

 

1300年代のファクタリングはすでにノンリコース?

 

1300年代にイギリスの商人のあいだで行われていたファクタリングは、ファクターが資金調達をサポートするだけではなく、買い手の支払いも保証していた記述が残されています。
当時はユダヤ人を相手にした穀物の輸入が頻繁に行われていて、取引先が逃げるなどお金が支払われないトラブルが相次いでいました。

 

貸付に近いファクタリングの起源は古代メソポタミア文明まで遡り、そこからお金やビジネスのある世界の中では貸金業に近いビジネスが常に存在していました。
1300年代のイギリスは、お金を貸すだけではなく買い手の支払いの保証という付加価値が加わっていたことでファクタリングの起源だと表現されています。

 

コロンブスの発見したアメリカ大陸

ファクタリングはその後、15世紀半ばからコロンブスを皮切りに始まった大航海時代にかけて世界中へ広がっていきます。
植民地を開拓するために出向する船に先行投資して、返ってきた時の成果物で見返りをもらう投資に近い形でファクタリングが活用されたケースもありました。

 

18世紀後半に産業革命が始まると、製造業者の運転資金でファクタリングを活用する事例が増えていきます。
時代によって形や目的は変わりますが、いつの時代も将来入ってくる売上を早期現金化したい需要と、お金を転がしてビジネスをしようとする供給が存在しています。

 

 

現代のファクタリングはスピード優先

銀行融資からクラウドファンディングまで、現代日本には様々な資金調達方法が存在します。
では、その中で敢えてファクタリングを選ぶメリットは何でしょうか?

 

多くの事業者が「即日資金調達!」「最短◯時間!」「柔軟審査で対応!」を殊更強調していることからも、短時間で現金調達できることが最大の特徴となっているのです。
銀行系融資に比べ割高な調達コストを掛けても、素早く柔軟な資金調達を優先したいという事業主に選ばれていると言えるでしょう。

 

 

ファクタリングのリスクについて

 

ファクタリングを利用する場合のリスクやデメリットについても予め知っておきましょう。
結論から申し上げますと「ファクタリング手数料」が利用する上では大きなネック・リスクとなります。

 

例えば「月末に100万円の入金を予定していたがファクタリング手数料10万円を支払った上で早期入金を図った」というケースの場合、本来100万円入るはずだったお金が90万円となってしまうわけですから、その手数料は大きなコストであると言わざるを得ません。

  • 1回限りの利用である
  • 早期入金によってもたらされるメリットの方が大きい

といった背景があるのであれば問題ありませんが、仮にファクタリングを定期的に使ったとしたら、問題を先延ばししていることに他ならないでしょう。
仮に上記の条件で2か月に1回利用してしまったとしたら、1年間で60万円もの手数料を支払わなければならなくなる計算です。

 

利用しやすいというメリットは、デメリットやリスクにもなり得ると言えます。

 

リスクについてさらに知りたい方はこちら(外部サイト)
ファクタリングのリスク

 

ファクタリングの言葉が生まれたのは18世紀後半

 

ファクタリングの言葉が生まれ、現代の形に直結する起源は明確になっていません
起源は1800年代後半から1900年代前半で、発祥の地はアメリカイギリスの2つの説があります。

 

日本に広まったのは1970年代からで、国内外ともにファクタリングの登場した当初は貸付に比べてマイナーな資金調達法でした。
現在は、借入をできない財務状況が悪い企業がファクタリングを使う需要が大きいですが、ファクタリングが広まった当初は、売掛先の支払いを保証する目的で利用する経営者が多かったです。

 

参考記事:日本におけるファクタリングの歴史

 

現代のファクタリング取引

 

金融機関の信用力が高まるにつれて手形取引の需要が拡大していき、早期資金調達ではなく売掛先の支払い保証の目的が強まっていきます。
現代は法改正や手形の需要と信頼性が低下するなどの問題など、あらゆる理由でファクタリングの需要が拡大し、利用する企業の思惑も多様化していきます。
当サイトでは、手形取引との違いやネットの普及による影響など、幅広い角度からファクタリングの歴史や進化の形を解説しています。